印章彫刻者の紹介
はじめまして、金沢市で印章店を営んでいる塩屋正晴といいます。
私は高校を卒業後、横浜市に在る神奈川県印章高等訓練校で印鑑を手で彫る技術と印章の学科を学ばせていただきました。
ハンコについての知識は皆無でしたが先生方の親切な指導を賜り、また、勤め先であった青山印房様の三越サンプラザ店で接客をさせていただき、本店(工場)では印章彫刻や活版印刷のご指導いただきました。
右も左も解らない私を青山様ご家族皆様は暖かく支えていただきました。 この場をおかりして心からお礼申し上げます。
当時、最初に教わったのが道具の作り方だったと思います。 ハンコを彫る時に使用するのが彫刻刀ですが、これを専門用語で印刀(いんとう)と言います。
先ずこの刃金を砥石で研ぐ作業を何十回もした記憶があります。 「実はこの作業が大変でした・・・・」
人によって異なるかもしれませんが、荒砥石→中砥石→仕上げ砥石の3つで刃金を研ぎます。
「全く手も足も出ませんでした・・・」 出るのは、指先からの血だけです。(事実です)
刃金を研ぐのと同時に自分の指先(人差し指)を研いでしまうので皮が薄くなり少しの刺激で出血します。(これの繰り返しでした)
ハンコを彫刻する以前の問題でした・・・「とても辛かったです・・・」
そうやって苦労しながら丸や四角の中に一文字を書き入れ彫刻していった覚えがあります。
不思議なもので自分で刃付け作業(印刀が切れるように研ぐ事)ができてくると、それに伴って彫刻作業も少しづつスムーズにできていきました。
彫れるようになってくると面白くなってきます。 数をこなすようになっていきました。(スポーツでも何でもそうだと思いますが・・・)
そうして数年後に2級印章技能士検定で24ミリ角に9文字で受けさせていただいたと思います。
横浜で事業所(青山印房様)で勤めながら印章職業訓練校に4年間通った後、金沢に戻り家業を継ぎました。
その後、25才の時に1級印章彫刻技能士の実技(1日)と学科(1日)を受験するのに日を分けて2度横浜に行きました。(ちょっと疲れました・・・)
お陰様で、合格の連絡をいただいた時は大変嬉しかったです。
1級印章彫刻技能士
厚生労働大臣認定の石川県内でも数名しかいない1級技能士を取得していますので、あなたの大切な実印を貴方だけの文字で彫る事ができます。
皆様もご存じの通り印鑑はあらゆる業種が取り扱っています。例えば、量販店、文房具店、カギ屋、etc.
また、印章専門店でもネットや路面店で 「早い!安い!!」を謳っている業者など様々です。
ただ、ここでちょっと注意してほしいのは前述の資格を取得していなくても印章店は開業できるという事です。
時間制限や極端に安価で販売している業者はレーザーロボットでの流れ作業でできたハンコです。
つまり折角注文したオリジナルの印鑑だと思っていても、それは出来合いのハンコと同じ工程で作成されたものなので世間には多く出回っているという事になります。
印章彫刻者の紹介でも書かせていただきましたが、印鑑を手で彫れる以前にその道具(彫刻刀)を作る事が大変な仕事です。 手間と時間がかかります。
ですから印鑑を彫れる人は全国的にみても少ないです。逆に脱サラしてフランチャイズチェーン店で展開していく方が多いのはハンコを彫る手間を省き徹底的に回転率のみを優先しているからです。
「3本セットで〇〇円」 と言うのが正にこれですね。 ただし、お客様の価値観も人によって様々ですので一言で良い悪いと決めるのは難しいかもしれません。
ちなみに1級技能士の実技課題は18ミリ丸の法人用実印(2重丸)でした。(難しい課題でした・・・・)
話が少しそれてしましましたが、「せめて実印は貴方だけの印鑑にできる印章店で求めてはいかがでしょうか・・・」
1等印刻師
日本印章協会認定の全国的にみてもごく僅かな方しか取得されていません。(※石川県では2名だけです)
印章業界で著名な先生方(東京)に毎月課題を出品し添削していただきました。
課題は本柘の8分角(24ミリ角もしくは24ミリ丸)と5分角(15ミリ角もしくは15ミリ丸)の二つを毎月の締切日までに郵送します。(きつかったです・・・)
書体が限定されていたり、丸や角で彫らなければなりません。 文字数が多かったり、逆に少なかったりバランスを整えるのが大変でした。
これを出品するきっかけとしては、横浜での修業時代は身近に先生がいらして緊張感もありましたが故郷へ戻れば環境はガラッと変わります。(だらけてしまう事になります)
当時、業界の競技会でもある大印展(大阪)や全国印章技術競技会(東京)に出品させていただいていましたが、技術のレベルがものすごく高く歯が立ちませんでした・・・
「とにかく今より上手くなりたい!」 それだけ考えて出品に明け暮れました・・・・・今、思えば懐かしいです・・・・
横浜時代と金沢に戻ってからを合わせ5年間程かかった覚えがありますが、お陰様で1級印章彫刻技能士と1等印刻師を同年にいただきました。
ご指導いただきました先生方、皆様に心からお礼申し上げます。
グッドスキルマーク認定
一級技能士等が製作した製品に「グッドスキルマーク」を初めて認定
~技能が活きた付加価値の高い製品等11件を認定~
厚生労働省は、このたび、技能検定制度※に合格した一級技能士等(特級技能士、一級技能士、単一等級の技能士)が製作した製品であることを示すマーク「グッドスキルマーク」の認定を、初めて行いました。
この取組は、一級技能士等が持つ熟練の技能を活かした製品等「グッドスキルマーク」の表示を認めることで、優れた技能によって製作された高付加価値の製品であることを国内外の消費者に向けてアピールし、ものづくり日本の再興と、熟練技能の継承を図ることを目的としています。
出典:厚生労働省 (https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000199095.html)
ものづくりマイスター認定
①技能検定の特級・1級・単一等級の技能士及び同等の技能を有する方、技能五輪全国大会の成績優秀者(銅賞まで)のいずれかに該当する方
②実務経験が15年以上ある方
③技能の継承や後継者の育成に意欲を持って活動する意思及び能力がある方
(ものづくりマイスター認定基準引用)
平成29年12月8日、11日は金沢市の兼六小学校へ「出前ものづくり講座」に伺いました。
石川県代表として全国技能グランプリ(印章彫刻)に出場
制限時間内で与えられた課題を手彫りするという最高水準の全国大会です。
出場資格は1級技能士である事と当然ですが手彫りの実力がないと出場できません。
上記二つの条件を満たして各県の代表選手となります。また、代表選手の出せない県もありますからかなり人数が絞られます。
ちなみに私が石川県の代表として出場した時は福井県、富山県、新潟県、の選手はいませんでした。
事実、私の前には神奈川県、後ろの席は京都府の選手でした。これでお解りいただけたと思いますが、それほど手彫りをできる人が僅かという事です。
ここでちょっと気をつけていただきたいのは、上記に対してネットで 「手彫り印鑑」を謳った業者の多い事です。
1級技能士の方は別として、例えば作務衣を着て印鑑を彫っている写真をよく見かけますがこれには呆れてしまいます。
「この人、本当に彫れるの・・・?」 正直、そう思う次第です。 一般の方にとってはハンコの大家に見えるんでしょうね・・・
これと同じで白衣を着てれば医者に見えるし、時には先入観は邪魔になるものですね。(笑)
「下記は大会に同行された県の職員の方に撮っていただいた実際の作業風景です。」
金沢市のマスコミに紹介されました
● 北國新聞 2007年(平成19年)3月6日(火曜日)朝刊
● 北國新聞 2006年(平成18年)9月3日(日曜日)朝刊
● 北國新聞 2005年(平成17年)11月5日(土曜日)朝刊
● 北國新聞 2004年(平成16年)11月6日(土曜日)朝刊
● 金沢情報 2004年11月24日(Vol.477)
「このページを最後までご覧いただきましてありがとうございました。」